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海へ

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今、戦争が終わった。
木の葉と砂の戦争が。
 
長かった月日。砂は、ようやく木の葉に降伏した。
しかし、お互いが出した犠牲者は数知れない。
それが、戦争の有様だった。勝利の後の利益や名誉より、受けた被害のほうが大きい。
死人の数ももちろん、逆に生き残った人間も。
 
「戦争が終わった!!木の葉が勝った!戦争は終わったー!!」
そう大声で叫びながら駆け回っているのは、木の葉の報告部の人間だ。
伝えることが義務である彼らは傷だらけであるが、必死に叫んでいる。
 
サクラは、その声に目を開けた。
 
「戦争が終わった!!木の葉が勝った!戦争は終わったー!!」
彼らは何度も何度もそう同じ事を繰り返しながら走り去っていった。
何分人数不足なのだ。
木の葉の里の隅々に情報を知らせるために、いつまでもここにいるわけにはいかないだろう。第一、ここには生きている人間は1人しかいない。
 
サクラはゆっくりと立ち上がった。
戦争が終わった・・・?
 
いや、終わってなどいない。
ここにいるすべての人間はぐったりと横たわって息を引き取っている。
これだけの被害を目の当たりにしながら、終わった、と。
 
「そんなわけ、ないじゃない・・・!!」
戦争っていうのは、永遠に終わることなんてない。
表面が『終わった』という形をとっても、死んでいった人々や、壊れた建物、枯れた草花。

本当は、歩きたくなんてなかった。
いっそ目を閉じて、あのまま死んでしまえばよかったのだ。

でも、サクラの頭にはあの約束が渦巻いている。
そして、ただ一つの強い強い気持ちが体を動かしている。

会いたい。
ただその気持ちだけで。
サクラは歩み出している。遠くにかすかに香る塩の匂い。
その方角へ、しっかりとした足取りで歩いた。


そう。
 ・・・海を目指して。
 
 
時は5年前にまで遡る。
彼女は12歳で、初めての中忍試験を受けてから数ヵ月もした頃だった。
サクラがナルトによって我愛羅という少年から助けられたあの日。
それから、数ヵ月後の任務の時だった。
 
他の里へ届け物をする任務だった。
鬱蒼とした森の中を歩いているとき、サクラはその不気味さに気をとられて7班の仲間とはぐれてしまった。
 
「どうしよう・・・。」
サクラは自分が迷ったことに気づくと慌てて立ち止まった。
初めてきた里の、初めて入った森。方角などわからない。地図も持っていない。
ここがどこだか、さっぱりわからなかった。
 
ただただ途方にくれて、おろおろとしているだけだ。
聞いたこともない怪鳥の甲高い鳴き声が響く。
どうしようもなく不安になって、涙がじわっとあふれそうになった。
 
その時、ガザガザという人が草をかきわける音が聞こえた。
はっとしてそちらに振り向く。きっとみんなが探しにきてくれたのだ。
 
「サスケくん!ナルト!カカシ先生!」
だが、そこにはしんとした草花が生えているだけ。
誰もいなかった。確かに気配を感じたのに。
サクラは「?」を浮かべながら気のせいだったのかな・・・と前に向き直る。
 
「なんだ、おまえか・・・。」
「っきゃあああ!!」
目の前にいたのは、忘れもしない『愛』の字が額にかかれた少年、我愛羅。
大きなひょうたんを背負った彼は、なぜか木から通常とは逆にぶら下がっている。
 
何を考えているのかわからない黒に縁取られた目だが、サクラが声をあげるとかすかに動いた。
「大声を出すな。死ぬぞ。」
サクラはその声で意識を取り戻す。
それと同時に、初めてこの男と会ったところを思い出した。

今と同じように木からぶらさがっていて。
結果としては木の葉丸を助けてくれた形になったけど、とんでもないやつだった。

木に締め付けられて、あやうく殺されるところだった。
ナルトに助けてもらったからよかったものを・・・。

むらむらと、憎しみのような感情がおしあがる。
サクラはきっと我愛羅を睨んだ。

「あんたは、確か砂の・・・。」
「そういうお前は、うちはと中忍試験にでてた女だな。」
 
その一言にサクラは思わずさらにむっとする。
「人をおまけみたいに言わないでちょうだい。」
「だからでかい声を出すなと言ってるだろ。にぎやかな女だな。本当に死ぬぞ。」
 
再び我愛羅の口からでた『死』という言葉にサクラは少しあとづさる。
「なな、何よ。あんたが私を、殺すって言うの?」
ホルダーからいつでも手裏剣をだせる位置においた手は汗をかいている。
 
我愛羅という少年の恐ろしさや才能なんかは、中忍試験だけで嫌というほどわかっている。
しかし、我愛羅はまったくそんなサクラを相手にせず、目を閉じてじっとしている。
 
「もうすぐ、来るな・・・。」
「え、何が?」
我愛羅はスタッと逆さまの状態から地面に着地すると、サクラを見つめる。
 
「おれがお前を殺すんじゃない。他の連中がお前を殺すっていってるんだ。」
それだけいうとサクラの手首を乱暴につかむ。
「きゃ・・・・!」
「騒ぐなといってるだろう。」
 
我愛羅は少し悲鳴をあげたサクラの口を手でふさぐ。
それから再び目を閉じてじっとする。
「・・・向こうからくるな。」
「だ、だから何が?」
 
手をどけて小声でいうと、我愛羅はサクラの手をつかんでいきおいよく走り出す。
「え!?」
「黙って走れ。死にたくは無いだろう。」
 
その言葉を信用していいものか、と一瞬考えたが、どうやら追手がきているのは本当らしい。
禍々しい殺気をおびた気配を、わずかだがサクラにも感じられた。
 
・・・ひとまずは、ついていきましょう。
そう思いながら、一緒に走る。
 
違う里の、しかもついこの間自分を殺そうとした男をこんなに簡単に信じるなんて。
普段のサクラなら絶対ありえないことだ。
 
それにもかかわらず共に走っているのは、彼の温かいこの手のぬくもりのせいかもしれない。
繋がった手に少し力を入れて、我愛羅とサクラは森をかけた。



初の我サクです。フガッ!なんじゃこりゃー!!
700hitです。リクありがとうございます、チカ様(TT)
そしてまたしても続きもの・・・。
そんなに長くはならないはずです。多分・・・。

ねくすと→

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