☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 
海へ−2

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 


しばらく走ると、気配は完全に消えた。
どうやら我愛羅は、この森の地形を完全に把握しているらしい。
それでも走りつづけると、木々がぽっかりとなくなっている場所にめぐりついた。
 
サクラは肩で息をしながら木の付け根に座る。
我愛羅もなんとなくそれに続くようにして横に座った。息はまったく乱れていない。
そこでようやく、お互いにお互いの繋がった手をはなした。
 
「大丈夫か?」
思わぬ気遣いに驚きながらも、サクラは少し悔しく思う。
 
体力の差がこんなにも歴然として表れるなんて・・・。やっぱり、こいつ、強い。
流れてくる汗を、髪を掻き揚げるふりをして少しぬぐう。
 
サクラの息が整うと、我愛羅はやっと状況をはなしだした。
「音の中忍どもが今、この森にちらばっている。」
いいながら、少し木々のほうを睨む。
 
「砂が音との同盟をきったんだ。急な行為に音は怒ってる。じきに戦争がはじまるだろう。」
「そ、そんな・・・!!」
サクラは声をあげる。
「そんなこと、今まで知らされてないわよ!」
「急な行為、といっただろう。昨日、同盟をきった。といっても、これは砂の裏切りだな。」
 
サクラは黙って話を聞いているが、悲しそうな目になる。
「直ぐに木の葉にも知らせが行くだろう。」
我愛羅はそこですこしだけサクラをみてから、視線をもどす。
「・・・音の上忍は砂へおしかけているから、ここにいるのはせいぜい中忍程度の奴らだ。」
 
我愛羅はそれで慰めたつもりらしい。
サクラはまだ悲しい目で、なにか言いたそうにしている。
「そういえばお前、1人でこんなところにきたのか?」
「・・・ううん。任務で。カカシ先生も、ナルトも、サスケくんも一緒よ。」
我愛羅は少し考えたような顔をする。名前と顔を一致させているようだ。
 
「ああ、あの片目の上忍と金髪の蛙野郎か。」
どうやら、カカシ先生とナルトのことらしい。
「うちははもちろんだが、そのメンバーならみすみすやられることなんてないだろう。」
「・・・そうよね。」
サクラは少し安堵してほっとため息をつく。
みんなよりも、むしろ、危ないのは私のほうよね・・・。
 
「そのことを心配してたのか?」
「うーん、それもあるけど・・・。」
どこかやんわりした我愛羅の口調に、自然とサクラの口は言葉を話す。
 
「ようするに、砂は音を裏切ったのよね。いままであんなに親密だった音を・・・。」
「ああ。」
なんでもない、というように我愛羅は相槌をうつ。実際、なんでもないのかもしれない。
 
サクラは探るように、我愛羅の目を覗く。
「なんだ?」
「砂は、何をするつもりなの?」
風が吹いて、木々が音を立てた。けれど、ふたりの目はぶつかったままだ。
 
「音と同盟をきることは、いままでの砂にとってプラスだったはず。それをどうして?」
「・・・そういえば、お前は頭がいいんだったな。」
「ごまかさないでよ。」
翡翠の目は真剣だ。
こんどは我愛羅は目つきをいっそう悪くして、サクラを目からさぐる。
 
「お前は将来、木の葉の財産になるな。たったあれだけの言葉からそこまで見抜くとは。」
我愛羅はやっと絡まった目線をはずして立ち上がる。
 
「砂は、里を統一する気だ。」
「・・・え?」
また風が吹く。さっきより強くて、少しやわらかかった。
「バラバラになっている様々な里を、一つにしてしまう気なんだ。」
「冗談でしょう!?」
 
サクラも負けじと立ち上がって我愛羅を正面から睨む。
「無理に決まってるじゃない!砂は天下統一をしようってわけ!?」
「これを決断したのはおれじゃない。おれに文句を言うな。」
「でも・・・!!砂は他より小さな里よ!そんな・・・。」
「だから。」
 
我愛羅は目を閉じて空を仰ぎ見る。サクラは言葉を止めてそんな我愛羅を見つめる。
「だから、まずは音を倒す。そして土地を捕虜と数々の有力な忍びを手に入れるんだ。」
我愛羅はゆっくりと目を開ける。サクラには、なんだかさみしそうに見えた。
「砂は、小さな里から徐々におとすつもりだ。」
 
「でも・・・。」
サクラはそんな我愛羅の後姿に呟くように声をかける。
「そしたら、いつかは木の葉も攻めるんでしょ?」
「ああ、攻めるな。」
サクラの問いに答えると、我愛羅は再びサクラと向き合う。
 
「そしたら、我愛羅と私は・・・敵同士になっちゃうね。」
「今も敵同士だろうが。」
「そうだけど・・・。殺しあわなくちゃ、いけないんだね・・・。」
涙が、サクラの翡翠からにじみだす。長いまつげにつかまって、いまにも流れ出しそうだ。
 
「しょうがないだろ。戦争だ。」
「そう、だけど・・!」
ここで、涙はあふれだしてきた。あとからも、どんどん、どんどん。
「私、戦いたくなんてない!!忍だけど・・・けど、そんなの嫌だよ!」
 
「・・・・。」
我愛羅は黙っている。サクラは自分の白い肩をつかんでしゃがみこむ。
「戦いたくなんてないよ・・・っ、我愛羅・・・、そんなのだめ?」
我愛羅は、サクラの目を見る。じっと。溢れる涙を。ぬれた翡翠を・・・。
 
「やっぱり、だめかなぁ・・・?」
「お前が。」
我愛羅は高い位置からサクラに手を伸ばす。
「お前がいやなら、やめればいい。おれは、お前を殺したりしない。」
「殺さ、ない・・・?」
 
サクラはこわごわ、その手に自分の手を伸ばす。
手と手がふれると、我愛羅は強い力でサクラを立たせた。
「どうして・・・。どうして、私を殺さないの?」
 
そういわれると、我愛羅は戸惑ったように頭をかく。
「どうして・・・?」
「うん。どうして?」
「・・・・・・。」
今度は、腕を組んで考え込む。そして苦しいように声を出す。
 
「おれが、お前を殺したくないからだ。」
「!」
「それじゃだめか?理由にならないか?」
 
はじかれたようにその言葉を聞いたサクラは、にこっと笑う。
「それでいいわよ!あはは!」
「わ、笑うな!」
涙はとまった。
 
しばらくそのまま笑ってから、サクラと我愛羅は仲良く座る。
「ねえ。でも私、やっぱり戦うわ。」
「?なぜだ?」
そのサクラの顔は、決意をきめた忍の顔だった。
 
「だって私、くの一だもん。みんなが戦うのに、私は逃げるんなんて出来ない。」
それから、からっとした笑顔でまた笑う。
「それに私、木の葉が好きなの。里を守りたいの。私の手でね。」
 
我愛羅はしげしげとその顔をみてから、
「そうか。」
といった。止めてるわけでもなく、賛成しているわけでもない。
そんな言葉だったけど、サクラはそれが嬉しかった。
 
「だが、おれはお前を殺さないぞ。」
「ふふ・・・!ありがとう。でも、私が殺すかもしれないわよ?」
今度は我愛羅はふ、と笑う。
「おれがお前なんかに殺されるか。」
「あー!ひどい!いいわよ、絶対強くなってやるんだから!」
 
それから偶然にも、同時に2人は立ち上がる。
「また音のやつらがくるかもしれない。そろそろいかないとな。」
「うん。」
我愛羅は再びサクラに手をのばす。
 
「お前の仲間がいるところはわからないが、森のそとまで送っていこう。」
「ありがとう、我愛羅。」
サクラもその手に落ち着いた気持ちで手を重ねる。
 
2人はゆっくりとあるきだした。
「なあ。」
「うん?」
我愛羅は呟くように、だがしっかりと言葉をいった。
 
「もし、木の葉との戦争が終わって無事だったら、海へこい。」
「海へ?」
「ああ、そうだ。」
握り合った手はたしかなもので、我愛羅が少し力をこめたのがわかった。
 
「おれも行く。どっちが勝ってもな。無事だったその時は、海で会おう。」
サクラも手を握りかえして我愛羅に微笑する。
「うん、行くわ!海へ・・・絶対に生き残って、海へ行く!そこで会いましょうね・・・絶対に。」
 
我愛羅もサクラをみて、ほんのわずかだが、微笑をかえした。
サクラはいたずらっぽく笑ってねんをおす。
「絶対にだからね!約束よ。」
「そっちこそ、忘れるなよ。」
 
気がつくと、もう森をでるすぐそこにきていた。
木々の間から外の景色が浮いている。
立ち止まって、また目をあわせる。もう抵抗はなかった。
 
「それじゃあ、また。」
「ああ。それじゃあ・・・。」
 
手が離れる。けど、寂しくはなかった。
離れた手のぬくもりが、まだ残っている。
サクラはつないでいた方の手をもう一方の手とあわせた。
 
「また、海で・・・。」
手に向かってつぶやく。
 
強くなろう。
サクラは目を閉じて気配をさぐる。7班のみんなの気配だ。すぐ近くにいる。
 
強く。
足に力をこめて、みんなのほうへといっきに走り出す。
私は、強くなる!!
 
約束を、守るために。
視界にみんなが現れる。サクラは速度をゆるめないで、一直線に彼らに向かって走った。



だーぶんはつづくーよー♪
最近小説をかけばかくほど文が長くなります。
どんどん長いですねぇ(爆笑)
次はもっと長くなるかもです。ははは!!

ねくすと→

女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理