☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 石像の話 ナルトのみつけた石像 その1 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「よく探せよ〜。」 「フン・・・。」 「わかってるってばよ〜!」 上司であるカカシ先生の声が響く。実にまのびした声に、サスケの機嫌がさらに悪くなるのがわかった。 機嫌の悪いサスケにちょっかいを出すと大変な被害をうけるので、おれは黙々と庭をかきわける。 今日7班は、金持ちの娘が庭でおとしたというマスコット、ド●モ君人形を探している。 けど、その庭というのがとにかく広い!! しかも背丈ほどある花やら葉やらがそこらじゅうに生えきっている。これでは人形が見つかる可能性は宝クジにあたるよりずっと低い。 「あ〜!もう!人形なんてどこにもないってばよー!」 サスケがじろりと睨んできた。まずい・・・。 こういうときのサスケは、とにかくヤバイ。本当に! 下手をすれば殺されるかもしれないってばよ・・・。 慌てて話題をかえようと、のんきにイチャパラを読むカカシ先生につっかかる。 「カカシ先生も手伝うってばよー!1人で本なんか読みやがって!」 「・・・同感だ」 サスケも同意見だったらしく、2人で講義する。 第一、部下に全部やらせて1人だけ本(しかもイチャパラ)を読むなんて、都合よすぎるってばよ! しかし。 「はあ〜。」 カカシ先生は口元をイチャパラでおさえながらため息をついた。 「本っっ当にかわいくないよな〜、お前達って。」 「ひどいってばよー!カカシ先生!」 ムッキー!とおれはジタバタする。と、サスケはクナイを取り出してカカシ先生に向かう。 「殺す!!」 「わー!落ち着くってばよ!サスケ!」 「はなせ、ナルト!」 焦りながらもサスケを後ろからおさえる。 頭に血が上ると、さっきもいったがサスケはやばい。 カカシ先生を殺すことはできないと思うけど、大きい怪我を負わすことができそうだ。 ところが、必死におれが抑えているのに、カカシ先生はスタスタと無視していってしまった。 「くっ!おい、はなせナルト!」 無理におれの手を解くと、サスケは荒い足取りで反対へ行ってしまう。 「はああ〜。」 無意識に大きいため息がでる。 この班には、おれとサスケの2人しかいない。 他の班は男子2名、女子1名のフリーマンセルで組まれるが、人数の都合でこうなったのだ。 「この班のチームワークが悪いのは、きっとそのせいだってばよ・・・。」 もし、この班に女の子がいれば。 サスケもカカシ先生もあんな態度はとらないはずだ。 きっと2人とも女の子の前ではちょっとおとなしくなる。 ・・・そんな気がする。 「女の子かぁ・・・。いのみたいなのは嫌だし、ヒナタみたいに暗いのも・・・。」 ムードメーカーで、おれが何してもニコニコ笑ってくれて、怒りっぽくない。 『バカ』とか、汚い言葉は使わなくって、怒鳴ったりもしない。 「・・・そんなこ、いるわけないってばよ・・・。」 ガサッ!! 「うおっ!!」 そんなことを考えているとき、おれの後ろで物音がした。とっさにクナイを構えて向き直る。 そこにあったのは・・・。 「?女の子・・・の、彫り物?」 それは石像だった。 灰色の冷たい石に彫られているのは、おれと一緒くらいの女の子。 大きさは両手でつかむのにちょうどいいくらいで、おれは、家にあるゴミ箱と同じくらいかなぁ、と思った。 問題は、その表情。 首には両手がのどを掻き毟るようにあり、座り込んでいる背中は弓のようにをそらせている。 形のいい眉は真中にしわをたてていて、でっかい瞳からは大粒の涙がこぼれだしている。 ほんのすこし口を開けている、なんとも・・・ 「苦しそうだってばよ・・・。」 みているこっちが息苦しくなってくる。ナルトはいてもたってもいられない気分になった。 そっと石像に近づく。と、その横には・・・ 「あ、ドー●君人形!!」 持ち上げて後ろと前を確信する。間違いない!! 「おーい!あったってばよーーー!!!」 手を口元に添えてでかい声で叫ぶ。 最近任務でもまったくいいところがなかった。サスケばっかり目立って・・・。 だから胸がどきどき高鳴るほど嬉しい。 はやる気持ちをおさえて2人がくるのを待つ。 「あ・・・!!」 はっと足元に目をやると、あの石像。 なんだかおれってば慌ててそれを草陰へと隠した。 まるで宝物を隠すように・・・。 おれは、他の誰にもあの石像をみせたくなかった。 おれだけの、秘密にしたかった。 そう。 おれだけの・・・。 「ナルト!!」 ビクッとするのが自分でもわかった。サスケだった。 すぐにカカシ先生もくる。 おれは得意げに●ーモ君人形をかかげた。 「へへへ、おれが一番だってばよ!」 「うんうん。よくやったぞ、ナルト。よくみつけたな。」 ゾクッとするほどにサスケが睨んでいるのがわかった。 笑顔をカカシ先生にむけて頭をかくが、背中には冷や汗がだらだら流れている。 「まあまあ。サスケもよくやった。今回はなによりも勘が必要な任務だったからな。野生に近いナルトが見つけて当然だ。」 そんな様子に気づいたのか気づいてないのか、カカシ先生もさりげなーくフォローしてくれた。 「先生、それ、けなしてるのかってばよ!」 ははは!とおれはツッコミをいれたが、サスケはくるっと背を向けて行ってしまった。 「そんじゃ、また明日な、ナルト。」 帰っていくサスケを気に止めずに、カカシ先生は短く言って、ドロンと消えてしまった。 「はあああ〜。」 いろんな意味で、任務は疲れる。 「あ!石像!!」 思い出すと、すぐに草の中へと飛び込んだ。 おれは石像を抱えて家へとはいった。 不思議なことにこの石像を持っているだけでちょっと癒される。 なぜだろう? 多分、この石像が苦しそうだから。 おれといっしょだから。 もう慣れた孤独。 あたりまえの1人。 おれは、きっと永遠に救われない。 なんとなくだけど、頭にそんな言葉がよぎる。 でも、だからといって寂しくならない、悲しくならない。絶望もしない。 そういうことを考えているのはいつものことだから。 もう、慣れた。 「ん、この石像、汚れてるってばよ。」 さっきまでは気づかなかったけど、目の部分に、少し緑のものがついてる。 「こけ・・・かな?まあいいや。洗うってばよ!」 思いつくがいなや、石像をもって風呂場へ駆け込む。 風呂はもう十分たまっていた。 隣のおばさんがおれが任務にいっている間にためておいてくれるんだ。 「・・・ん?・・お・・・おおおお!う、うわわわ!!!」 突然、石像が熱を持って重くなった。 そんなに重いわけでもないけど、不意打ちだったからおどろいてころびそうになった。 あわててバランスを保とうとしたら、手から石像がすべり抜けていった。 バシャーン!! 熱湯というわけではないが、ほどよく温かくなった風呂へと石像はおちてしまった。 「あ!」 おれは慌てて風呂へかけこむ。 しゃがんで淵に手をかけて、中を覗き込む。 ばしゃ!! なにかが勢い欲湯からでてきた。 おれの目に最初に飛び込んだのは、緑のもの。 なにかが、いや、誰かがでてきたのだ。 それは、ピンクの髪をした、緑の目をもつ女の子。 赤い服を着ているけど、髪といっしょに水びたしになって白い体に張り付いている。 「・・・・・・。」 同じ目線で、そのびしょぬれの女の子は、じっとおれを睨んでいた。
やってしまった・・・。 本当に私はパラレルが大好きだなぁ・・・、と、この話を書いていて実感しました。 お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、この話、3バージョンあります。 カカサク・ナルサク・サスサクの3つです。 これはナルサクですねぇ。この話だけは、なんとなく他とは別物って感じですね。 なんかナルトがカカシ先生とサスケ君の間っこでおろおろしてます(笑 3つの話、根本(石像をみつけるって話)は同じです。内容はまったく別物ですが、同時進行しています。 好きなものをお読みください。 ただし、くれぐれも期待はしないよう(汗