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石像の話
            ナルトのみつけた石像 その2
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 「ナルトー!起きなさい、朝よ!!」
うっすらと目を開けると、白く温かい太陽の光が飛び込んできた。
あまりの眩しさにすぐ目を閉じる。

「こらー、また寝るなー!」
コツンッ!とおたまで頭を殴られた。
「!いってー・・・。」
再び目を開けると、そこには同じ年くらいの女の子がいた。
 
・・・忘れてたってばよ。

すべての始まりは昨日のこと。
任務中に大きな石を拾ってきてから、すべては始まった。

「あ・・・あの・・・。」
突然重くなった石におれはバランスをうしない、石像を湯船に落としてしまった。
そこまではいい。
だが、でてきたのは女の子だった。

「誰?あなた。」
「え?」
びしょぬれになって張り付いた淡桃色の髪を、女の子はゆっくりとした動作でとった。
「お、おれは・・・ナルトだってばよ。」
「そう。ナルトっていうんだ。」

女の子は小さくそう呟きながら湯船から出てくる。
おれはその姿を見て思わずあっとしてしまった。

彼女の顔も、髪型も、服装も、すべて落とした石像と同じ物だったのだ。
ただ違うのは、表情だけ。
女の子はまったく苦しそうなんかではなかった。

「ねえ、ナルト。」
「は、はい?」
思わず改まった返事をしてしまう。
女の子はおれの前にしゃがむと、ぐっと顔を近づけた。

か・・・かわいい・・・。

彫り物とは全然違う、鮮やかな色。
真っ白で柔らかそうな肌も、吸い込まれそうな翡翠の瞳も。
雫が肩を滑っていく様子を、おれは金縛りにあったように見つめてしまった。


「あなたねえ・・・。」
女の子の出した声は、どこか甘美な夢のようだ。
おれはくらくらして、真っ赤な顔をしてしまっている。

 
がし。
「え?」
女の子はおれの胸倉をしっかりと掴んだ。
よくよく見るとそのかわいい顔には青筋が浮き出ている。


「人を湯船に突き落としておいて謝りもしないなんて、何様のつもりだーーーーー!!」
 
どごっ!!
「うべばっっ!!」
女の子はその容姿からは思いつかないような力でおれを殴り飛ばした。
おれの体は壁に思いっきり叩きつけられる。

・・・すくなくとも、5メートルは飛ばされた。
ここが広いグラウンドだったら、世界記録がでていたかもしれない。
ぼんやりとそう思っていると、女の子はまたおれの胸倉をつかんできた。

「さあ、謝ってちょうだい!!」
「す、すいませんでした。」
ものすごい剣幕で睨んでいるのでおれはたじたじとしてしまう。

「うん。初めから素直に謝ってればいいのよ。」
あっさりといってからぱっと手を離す。それからにこりと微笑みかけてきた。

おれははあはあと荒い息を落ち着かせる。
と、冷静になってからさっきの言葉が反復される。

(人を湯船に突き落としておいて謝りもしないなんて、何様のつもりだーーーーー!!)

ちょっと待て。
おれはこの子を突き落としてなんていない。
おれが落としたのは・・・そう。

石のはずだろ?


一気に警戒心が湧き上がってきた。
おれは思わず真剣な顔で女の子を見つめる。
戦いの目で。

すぐにおれの変化に気がついた彼女はおれと向き直る。
「何?」
「お前・・・誰なんだってばよ・・・。」

女の子は首をかしげた。しかしおれは表情をかえない。
「おれがもってきたのは・・・石像だ。なのにどうして、湯船からお前がでてきたんだ?」
女の子は一瞬斜め下を、湯船の中を見る。
おれからまたおれに目を向けた。

「何がいいたいの?」
「何が・・・って、変だろう!石が人に変わるなんて!!」
すぐに足につけていた手裏剣ホルダーに手をかける。
「お前、何者だってばよ!」


しーん、とあたりが静まりかえった。
女の子は驚いた顔もしないで、ただおれをじっと見つめている。
冷や汗が、ゆっくりとおれのこめかみを流れた。

「しょうがないわね。」
女の子はため息をつく。
おれの体に緊張がはしる。何をいうつもりだ?

「実は私ね・・・。」
ごくり、と自分がつばを飲む音がきこえた。


「妖精なの。」
「・・・・は?」
「妖精。」

また沈黙がはしる。
おれはぼんやりとききかえした。
「・・・妖精?」
「そう。石の妖精」

女の子の顔はしれっとこたえる。
おれは手裏剣ホルダーから手を離して女の子の目を見つめた。

「・・・何よその目は。」
女の子はおれの顔をみてむっとする。
そんなに馬鹿にした目だったのだろうか。

「・・・嘘だろ。」
「嘘よ。」
 
・・・・・・。

「あのな、本当は一体なんなんだって・・・。」
「それより!おなかすいちゃったよね。ご飯食べたい。」
「はぐらかすのは・・・!」

ぐぎゅる〜・・・。

「・・・・・・。」
「何よ。あなたもおなかへってんじゃない。ご飯作ってあげるわよ。早く食べましょ。」
「う、おう。」
真っ赤な顔で頷く。
しょうがないだろ。腹が減っては戦はできぬってやつだ。

女の子はそんなおれをみてくすっと笑った。
「そういえば・・・名前、聞いてないってばよ。」
「私?」
女の子は自分を指差すとにこりと微笑んだ。

「私はサクラ。よろしくね!」



「ちょっと、ナルト!早く動いてよね!」
現実に引き戻される。
やっぱり昨日のことは夢じゃなかった。

おれがのそのそと着替えて台所にいくと、サクラちゃんはすでに椅子に座っていた。
「おっそーい!」
「ご、ごめんってばよ。」
おれは慌てて席につく。
サクラちゃんはぶすっとおれの行動を見ていたが、すぐに微笑んで手を合わせる。

「それじゃ、いただきます。」
「あ、いただきますってばよ。」
サクラちゃんが箸を手に持って茶碗を持つのを横目で見ながら自分もおかずを口に運ぶ。

「うん、サクラちゃんは料理上手だってばよ。」
「ふふん。まあね。」
照れることなどなくさらりと受け流す。ある意味すごい。

「それよりナルト。早く集合場所に行かなくてもいいの?」
「ああ、大丈夫なんだってばよ。先生いつも遅れるから。」

おれは魚をつつきながら小さな声で話す。
「だから、もっとサクラちゃんと話してても大丈夫なんだってばよ・・・。」
「ふーん。」

あんまりにもあっさりしすぎた返事でおれはサクラちゃんの顔を見る。
何やらぼんやりと頬杖をついて外を見ていた。

「・・・。」
「サクラちゃん?」
「え?ああ。ごめん。早く出かけたほうがいいわよ、やっぱり。」

サクラちゃんはぱっと立ち上がるとおれの任具と上着を持ってくる。
「ほらほら、立って。」
「?急にどうしたんだってばよ?」

おれは慌てながらもサクラちゃんが持ってくれている上着に腕を通す。
「うるさいわね。もしかしたら今日は早く来るかもしれないでしょ。」
サクラちゃんはせっせとおれの足にホルダーを取り付けた。

「なんでそう思うの?」
「勘よ。」
額当てをぎゅっとおれの頭に結ぶと、背中をどんっと押した。

「うわ!」
「よし、準備万端!!」
おれは玄関で靴を履く。
「ナルトが出かけてる間はしっかり留守番しとくからね!」
「あ、ありがと・・・。」

明るくそうはいうものの、今日も昨日のような任務だと思うと少しどんよりする。
任務の内容も確かに不満だが、あの2人。
間でぎくしゃくするのは気まずいのだ。

「ナルト!」
「?」
「気合よ、気合!」
「!!」

少しびっくりしてから、おれも笑って親指を立てた。
「おう!いってきます!」
「よっしゃ!行って来い!!」


久しぶりに清々しい気分で家を飛び出る。
振り向くと、サクラちゃんが手をふっているのが見えた。
おれも大きく手を振り返して、太光の中へと飛び込んでいった。



ナルトは他の2人のようにサクラちゃんをあんまし怪しみません。

1つ、すでに惚れてるから。
2つ、奴が馬鹿だから。

突っ込むところは他にもありますが、まあご愛嬌ってことで・・・(汗)
まだ続きます。

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