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海へ−3

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暗く静まり返った灰色の町。
そこを場違いな淡桃色の髪をもった少女、サクラは、ただただ歩いている。

・・・海を目指して。

『約束』をかわしたあの日からさらに1年。
私は遂に中忍試験に合格した。
その時はナルトとサスケくんも中忍だったから、まもなく7班は解散をした。
それからみんなが元気でやっているかどうか、私は知らない。

けど、カカシ先生は相変わらずで、サスケくんとナルトは暗部にはいったという話を聞いた。
みんな強くなっている。私以上に。

私がどんなにがんばっても、みんなには追いつけない。
一時は7班の3人の中でサクラが一番強い、ってカカシ先生に言われたこともあった。
そしたら2人は逆に闘志を感じたのか、よけい強くなってしまった。

そのまま、私は置いてけぼりだ。
今はカカシ先生と同じで新人の忍者達を班構成にわけて教えている。
同僚は腐れ縁のいの。

そして、いのも私も戦争へ借り出された。・・・たとえ女でも、教師でも、忍びだから。
拡大した砂の勢力に対抗するために、教え子の新人達も最前線で戦っている。
当然、サスケくんもナルトもカカシ先生も戦っているのだろう。

とんでもない人数にかこまれた私だけど、幻術でなんとか生き残ることができた。
それでもこんなにフラフラ。もう体力の限界だ。
最前線は、どうなっていたのだろうか。

みんな強いから、きっと先陣を切って戦っていたはずだ。
結果としては砂が降伏して木の葉が勝ったわけだけど・・・。
無事だろうか?

ナルトも、カカシ先生も、サスケくんも、いのも・・・。
彼も。

もう間もなく海がみえるだろう。
そこに彼も・・・我愛羅もいるだろうか。約束を覚えて、生きているだろうか。
塩の香りが強い。漣がきこえる。

サクラは足を止めた。
――――海だ。
暗い、深い、なにもかも飲み込んでしまう闇。

海に、でた。
すぐにあたりを見回す。とくに人影は見当たらなかった。
止まったりしないで、サクラはさらに進んでいく。足は限界だったけど、気づかなかった。
やわらかい砂を素足にかんじなら歩く。

やっぱり、誰もいない・・・。

頬を、静か過ぎるほどゆったり風が撫でた。
ひんやりするのを感じて、サクラは初めて自分が泣いていることに気づく。

「うう、ばかぁ・・・。」
いったん確認してしまった涙はとどまることを知らずに溢れてきた。
「約束・・・って、いったじゃない!」
こぼれた雫を、波がさらってしまう。サクラは悔しそうにその海水を睨みつける。

「最低のひょうたん魔人!!地獄へおちろーーー!!」
「誰が。」

ぴたり、と時間がとまる。その一瞬、サクラは波の音も耳にはいらなかった。
ゆっくりと振り向くと、そこには目つきの悪く、腕を組んでこちらをみる少年。

「誰がひょうたん魔人だって?」
「・・・我愛羅・・・?」

サクラは向き直ると、下から上へとその姿をみる。
背中に背負われたひょうたん、額の『愛』の文字。
縁取られた黒い目は前より鋭いのに、前よりずっと人間らしくて。
全体的にがっちりして伸びた背は、サクラを悠々と追い越している。

「・・・本物?」
「偽者なわけあるか。」
発せられた声の主は、確かにあの日約束をかわした少年。

「我愛羅・・・。」
「悪かったな、待たせたみたいで・・・。」
言い終わらないうちに、サクラは彼の胸の中へと駆け出す。
「我愛羅!!」

止まった涙がまた溢れ出してきた。
我愛羅が一瞬固まったのが伝わったが、やがてゆっくりと背に腕をまわしてくれた。
さらに密着する体で、お互いの体温が感じられる。

暗闇の中で、まるでそこだけが明るく照らされているように、2人の心は満ちている。
今、この瞬間。
生き残れて、約束が守れた。再び、巡り合うことが出来た。
何よりの、幸せ。

・・・どれくらいの時間がたっただろう。
ゆっくりと体を離すと、『約束』したあの日のようにサクラが砂浜にすわり、つられて我愛羅が横に座った。

「もうすぐ、日が出るわね。」
「ああ。」
「我愛羅ったら、昔からそればっかり。」
「そうか?」
短い彼の言葉も、それだけで満足。
もともと口少ない人だから、サクラはこれで十分なのだ。

ざざ、ざざ・・・。
絶えることなく続く漣の音に耳を傾ける。
そこに、我愛羅の言葉が唐突に、しかしながれるように滑り込む。
「木の葉は、勝ったな。」

すぐには、言葉がでなかった。
「・・・ええ。」
「よかったな。」
「どうして?」
海から目を離して直に我愛羅をみる。
その心底不思議そうな顔に、我愛羅のほうが返事に困る。

「どうしてって・・・。お前、木の葉が好きだっていってただろ。」
「・・・。」
「里を守りたいって。」
「・・・うん。」

ざざ、ざざ。
波のおとが、異様に耳につく。それは我愛羅も同じなのかしら。

「ねぇ我愛羅。」
「?」
「どうして、人は争ったりするんだろう。」
「・・・・・・。」

ざざざ、ざざ。
足元まではくるけどサクラの足にはぶつからない、波との距離。
『人』と『感情』も、こんな微妙な位置にあるんじゃないだろうか。

「おれは・・・。」
我愛羅は顔を海に向けたままだ。暗い海を、そらすことなくじっと見つめる。
「お前と初めて会った頃、おれには殺すことが全てだった。」
「・・・・・・。」
「弱かったんだ。」

サクラも同じように海を見ているから、我愛羅の表情はわからなかった。
ただ、迷うことなく、戸惑うことなく、じっと海を見る。
目はあわさないが、同じ物を見ながら交わされる会話。

「傷つけあうことで、強さを覚えられた。生きてるって実感できた。」
「・・・・・・。」
「本当は、殺しなんか好きじゃなかった。けど、やめられなかったんだ。」

視線を我愛羅に移す。彼も、サクラを見つめた。
「弱かったんだ。」
どちらも視線をそらしたりしない。恐ろしいほど冷静に見詰め合う。

「人って・・・。」
ゆっくりとサクラは口を開いた。
「人って、弱いものね。」
我愛羅は動じないで、サクラはさらに言葉をつないだ。
「傷つけあうのは、弱いからなのよね。」
「そうだな。」

「けど・・・。」
ざざ、ざざざ。
「我愛羅は、強いよね。」
「・・・お前に言われると、変な感じだ。」
それが照れ隠しの一種であることはサクラにもわかった。

我愛羅は、正直に嬉しかったのだ。
最も信頼するサクラに、『強い』と本当の意味で認められたから・・・。

「見て・・・夜明けよ・・・。」
突然、海に輝く太陽の頭が顔を出し始めた。
その瞬間、いままで暗く潜んでいた波たちが青く照らされる。
眩しすぎるほどの光が、2人の、暗闇に慣れきった目に強くささる。

「夜明けが来ない日はない。」
ポツリと我愛羅がつぶやいた。
サクラははっとして我愛羅を見つめてから、ふっと微笑んでまた海を見つめた。

「ええ・・・。必ず、太陽はあらわれるわ。」
「ああ。」
腕を組みながら挑むように眩しい海を見る我愛羅。
後ろで手をくみ、優しい目で見守るように明るい海を見るサクラ。

戦争は終わった。
逸らさずに、逃げずに暗い海を見つめていれば・・・。
必ず夜明けがくるように。
太陽が海を鮮やかに照らすように。
きっとすぐ、木の葉にも砂にも、こんな風に希望の光が差し込むだろう。

少年と少女の体を、あさひが温かく包み込む。
恋人でも、友達でもないけど、2人はお互いに通じ合っていた。

これから再びまた巡り合うのかはわからないけど・・・。
それでも、2人の体は同じ光で包まれ、同じ海を見ている。

新たで偉大なその輝きを、2人はずっと、並んで見つめていた。



初の我サク小説、ついに完結であります!!(涙)
いやあ、初めてがこんなに暗くていいんでしょうか??
ので、せめて最後は希望を込めて・・・。
戦争はダメだぞ!!ということが、この小説から伝わればいいなぁって・・・。
そんな感じで。
最後のシーンはどうしても思い浮かばなくて、松田聖子様の歌から連想しました。
『瑠璃色の地球』です。
合唱で合同練習してたら、相手の学校がこれをハモってくれて。
メッチャいい歌詞です。機会があったら、ぜひ聞いてみてくださいね♪
それでは長々とまたせてしまいました。
チカ様、リク本当にありがとうございました(^^)

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