境界


 



「キスして、いの。」
 
突然のことに、当然いのは目を丸くした。
しばらく口をぱくぱくさせてから、サクラの真剣な表情を見て一歩あとずさる。
 
 
「あ、あんたって・・・もしかして、レ・・・」
「ちょっと、変な勘違いしないでよね!!」
サクラはばん!と勢いよく机を叩きながら、憤慨した様子で立ちあがった。
 
 
ここはアカデミーの校舎の教室。
いのとサクラがつかっていたくの一の教室だ。
 
今日はスリーマンセルの班分けの発表があったのだ。
下忍のくの一はスリーマンセルで組まれる場合、自動的に男2人と組むことになる。
なので2人ともバラバラになるとはわかっていたものの、やはり辛かった。
 
なんだかんだで腐れ縁だった2人は、今までずっと同じクラスだったのだ。
初めての別れに困惑しながらも、素直に『寂しい』などということは妙な意地があっていえない。
 
アイスクリームでも食べて家に帰るはずだったが、気がつけばアカデミーにきていた。
これから下忍になる2人にとって思いでの場所。
 
 
最初は今までのこと、これからのこと、2人が競って恋をしているサスケだので盛りあがっていた。
ところがお互いにだんだん口数が少なくなっていく。
おそらくアカデミー生から下忍になるという『卒業』という『成長』が、自然と2人をそうさせたのだろう。
もちろん班が別れてしまうという悲しさもある。
 
最終的に無言で、懐かしむように教室やそこの窓からみえる校庭を見つめていた。
会話がないというのに気まずいことはない。
それどころかとても心地よい、暖かい雰囲気だった。
 
 
「・・・ねー、いの。」
サクラはいのと同様に校庭を見ながら、呟くような小さな声で言った。
「んー?」
「あのさ。」
「なによー?」
 
 
「キスして。」
 
 
ここで場面はやっと冒頭に戻る。
驚き、(サクラ曰く)妙な勘違いをするいのに、怒った様子でサクラは立ちあがった。
 
「あのね、私はそういう趣味は持ち合わせていないの!!いい!?」
「は、はあ・・・。」
サクラの剣幕におされていのは唖然として頷いた。
 
「今日のこと、いのも知ってるでしょ!?」
「・・・今日の?なんかあったっけ?」
「もう!ナルトとサスケくんの例の事件よ!!」
「ああ・・・。」
 
 
言われてからやっと合点があう。
例の事件とはいわずとしれた、くの一の憧れ・うちはサスケがナルトとキスをしたというものだ。
それもほっぺなどという生易しいものではない。
口だ。口と口だ。マウス・トゥー・マウスだ。
あまりこういっていると気持ち悪いが、事故なのだから仕方ないだろう。
 
 
「・・・で、それがどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないわよ!!」
サクラはしゃーんなろー!と叫びながらこぶしをつくる。
 
「あの2人がキスしちゃったのよ!?これから同じ班になる2人が!!」
「あー・・・何?気まずいの?」
「違うわよ!!私、ファーストキスってまだなの!でもあの2人は、少なくとも今日ですませたことになるわ!!」
「でも男同士じゃない。事故なわけだし。」
 
 
あきあきした様子で髪をいじっていていたいのに、サクラはとんでもないと手をふった。
「そういう問題じゃないわ。私がしてないことをあの2人はしてるのよ!?」
「んー。なんかやらしい表現ね、その言い方。」
「とにかく私は、しょっぱなから出鼻を挫かれたってこと!さっそく遅れをとっちゃったのよ。」
 
そこまで興奮状態でいってから、サクラはおいおいと泣き始めた。
「ううう・・・。もうおしまいだわ。」
「ちょ、泣くことないでしょ!!」
 
涙するサクラにいのは慌てて立ちあがった。
興味のない話は聞き流しても、理由はどうであれサクラの涙は流させたくない。
 
 
「そんなの、あんたがすませちゃえばいいだけじゃない!」
「うん・・・そうよね。私もそうおもう。」
「・・・・・・え?」
 
顔をあげたサクラの顔に、涙など跡すらない。
そのかわり、素直ながらに空恐ろしい笑顔がそこにはあった。
 
 
「そういうわけだから、いのも協力してくれるわよね?」
「ちょ、ええええ!?ななななな、なんでそうなるのよ!!」
「だっていのも『すませちゃえばいい』っていったじゃない。だから。」
「そりゃ言ったけど・・・。なんで私なのよ!男としなさい、男と!女同士なんておかしい!」
「あの2人だって男同士だったし、私も相手は女の子で十分よ。それに男の子とのキスはもっとちゃんとしたいもん。」
 
 
サクラは微笑むと、何もいえなくなったいのの頬に手をおいた。
弾力のある柔らかい頬を包み込むと、いのはゾクリと鳥肌を立てる。
だが金縛りにでもあったように抵抗できない。



 
「協力してね、いの。」


にこりと笑うサクラの顔を最後に、いのは観念して目を閉じた。





本気でやばいね、これ・・・。苦情は受け付けません。
題名の『境界』は境界線のこと。
友情と、それ以上のものの境界線。2人はこのあと踏み越えちゃったみたいよ。(笑)

あえてするキスしちゃう瞬間を書かないのは、書けなかったから。
本当にしたのかね?話の続きの予想としては・・・

@した。
Aいのが拒んだ。
Bサクラちゃんが「冗談よー」といった。
C乱入したイルカ先生(アカデミーだし)によって阻止された。

くらいかね。こうしてみると、した可能性は結構ひくい(??)
補足ですが、サクラちゃんは完全に天然です。確信犯じゃないです。
サクラちゃんはなんだかんだでナルトとサスケについていけるか不安だと思うんですよ。
だからってこれはないと思うけど。y



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