『ラジオから流れる音楽と声って、ほんのちょっと雑音混じりじゃない。
それなのに流行りの歌とか、明るいトークとか流してて。すごく現代的ですごくオシャレな感じ。
そのギャップが、なんだか落ち着くのよね。』

ペンネームという名の匿名希望。
悩みや冗談。最近の生活や流行についての投稿。
途中途中に入る天気予報や渋滞情報、スポンサーのCM。
決まった時間に始まり、決まった時間に終わる。


『わたし、ラジオって好きだな。』


今でもあの声が忘れられない。



レトロ




おれは暇さえあればよくラジオを聞いていた。
別に好きなわけでもないが、なんとなくすることがないとスイッチをいれてしまうのだ。

顔も知らない奴が勝手に話して盛りあがっている。
楽しいとも思わずに、おれは黙ってその話をきいているのだ。


いつからだったろう。
何かの弾みでおれがそのラジオの話をしたときからだった。
幼馴染でたいして仲のよいわけでもない女が、おれの家に入ってくるようになったのは。


初めて来たときも、サクラは窓からはいってきた。
夜の冷たい風に髪をなびかせながら、悪びれる様子もなくこんばんわと挨拶をしてきたのだ。
このときは、本気で心臓が飛び出したのをよく覚えている。


春野サクラはピンクのめずらしい髪色をもった女だ。
目だって吸い込まれそうなほど深い緑色で、どこか神秘的な匂いがする。

思わず目がいってしまうような容姿をもってるくせに、性格はイメージと正反対。
とにかく我侭で、その上男顔負けの根性がある。
ズバズバきついことを言ってくれると思いきや、驚くほど自信なさげにしょげているときもある。

とりあえず変わっているという事は確かだった。


そのサクラが、おれの家に頻繁にやってくるわけだ。
それも窓から、無断で。


「お前さ、いい加減に窓からはいってくるのやめろよな。」
「何でよ。いいじゃない別に。」


サクラは暇つぶしで聞いているおれと違って、マジでラジオが好きらしい。
だからおれの家にやってくると、決まってラジオをつけるのだった。
そして会話らしい会話もせずに、ラジオが終わると満足げに帰っていく。

最初は何がしたいんだかと頭を抱えたが、毎日のことなのでもう慣れた。
理由なんて、考えるだけめんどせえ。
今ではサクラが来るのをラジオをつけて待っているほどだ。
時々来るのがおそかったりするとどうしたのだろうかと心配したりする。

・・・慣れっていうのは怖いものだ。




あの日から、何年経っただろう。
中忍のままぼんやりと過ごしている間に、サクラは意外にも上忍になってしまった。

サクラはもちろん、おれだってそれなりに忙しいにも関わらず、相変わらずサクラは夜おれの家にやってきてはラジオを聞いてかえっていく。
そんな毎日が続いていた日だった。



「こんばんは。」
あの日もまたサクラはやってきた。

「よう。」
机に向かって本を読んでいたおれは(ラジオをつけながら)振り向いて目を丸くした。
いつもなら子供の頃からかわらなかった服なのに、今日は違った。

サクラは、上忍専用の装束を身につけていた。
腰には小さな刀を2本さしていて、額当てを額にきっちりとつけている。


しかしサクラの表情はいつもと同じだった。
何を考えているのかよくわからない笑顔。
吸い込まれそうな瞳に、ずいぶんのびたピンクの髪をなびかせて。
目がさめるような整った顔立ちで、凛として窓に腰掛けている。


だけど、漠然と感じる。
ああ、これから任務に行くんだな。
それも相当きつい、A・・・いや、Sランクの任務に。

思いながらも口には出せない。
出しては、何かが音をたてて壊れてしまう気がしたから。


おれはサクラに向けていた顔を、読んでいた本に写す。
ラジオの音が耳にはいってくるが、何をいっているのかはわからなかった。
サクラは微笑しながら窓の淵に腰掛け、目を閉じてラジオを聞いている。

無言のおれ達の間に、ラジオだけが鳴っていた。


「わたし、ラジオって好きだな。」

サクラがおれの顔も見ないで突然呟いた。
ラジオを聞きながらサクラが言葉を発するのは、これが初めてだ。

それからサクラはおれが相槌をうつのも待たずに、自分がラジオのどこが好きなのかを話し始めた。
おれは呆気にとられながらも何も言わずにサクラを見ていた。
しばらく話しつづけて言いたいことがいいわると、サクラは静かに口をとじた。

「シカマル。」
「・・・・・・なんだよ。」

寂しさを全部集めたようなサクラの声に、おれは叫びだしたくなった。
できることなら、おれの出せるすべての力をつかって思い切り抱きしめたかった。
思えば、おれは一度もサクラに触れたことがない。
何年も顔をあわせていながら、不思議といえば不思議だ。


「ありがとね。」


サクラの声と同時に、ラジオの番組がおわった。
一瞬サクラが微笑んだのが見えたが、次の瞬間にはサクラの姿は消えていた。


「ばーか。」
おれは毒づきながら、サクラがさっきまでいた窓に手をかける。
暗闇が広がる外の世界も、どこかにサクラがいると思うとたまらなく愛しかった。


「そりゃこっちの台詞だっつーの。」


サクラの声が忘れられない。
あいつはどんな思いでありがとうといったんだろう。


おれはこれからも、好きなわけでもないラジオを聞きつづけるだろう。
いつの日かまた、サクラがこんばんわといいながら窓からはいってくる日のために。





言い訳といわれようが、いわせてください。
「スランプなんです。」
マジです。だからこんなにめちゃくちゃなんです。本当です。
もうどうしようもない。一体何回書きなおしたんだろう・・・。でもこれですよ。

まあ駄文っぷりはどうあれ、話のネタ(?)は気に入っています。
誰か小説がうまい人にかいてもらいたいくらいです・・・ぐはぁ。
ツッコミ所満載なんてもんじゃないよ、これ。
自分でつっこんでみたら60箇所ぐらい「なんでやねん。」って言えます。(半端)

どうでもいいけど、つっこむ時だけ大阪弁になるのはよくないと友人に言われました。
管理人は現在埼玉県に住んでるけど、生まれと育ちは関西方面なので、堪忍してね。(引っ越し魔なのよ)



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