「へえ、なかなか綺麗だな。」
「そりゃあね。女の子だもん。」


今日、商店街でサクラとカカシはばったりと出くわした。
それからしばらく2人で話していると、どういうわけかサクラの家へいくことになってしまった。

よくよく考えてみると、ナルトとサスケの家には行ったことがあるが、サクラの家はない。
もっともナルトとサスケは独り暮らしなので、差し入れをした程度だが。
特に断る理由も思いつかなかったので、カカシはそのままサクラの家へと訪問することになったのだ。


サクラの家はなかなか大きく、どちらかというと上流家庭であるらしかった。
両親も突然やってきたにも関わらず暖かく出迎えてくれ、カカシは問題のない家庭に少し安心した。
そして案内されるまま、サクラの部屋にやってきたというわけだ。



ぱっと見てこざっぱりと片付けられたその部屋は、ぬいぐるみなどの類があまりない。
部屋全体は白で統一され、この年頃の女の子にしては物足りない気もした。

「おや?」
ざっと部屋をみわたしてすぐに気がついたのは、壁にいくつもかけられた額縁だ。
海や空や植物などの風景が多いそれは、どれも驚くほど大きいものばかりだった。
よく目を凝らして見ると、それはすべて・・・。


「これ全部、ジグソーパズルか?」
そう。パズルだったのだ。
ほとんどのピース1つ1つは指の先ほどで、かなり難易度が高いことはすぐにわかる。
おまけに風景はほどんど同じような色なので、カカシなら1年やっても完成しないかもしれない。

「うん。わかる?私、パズルって好きなんだ。」
いつのまにか横にきていたサクラは、カカシと同じようにパズルを見上げる。
そのパズルは海の絵で、大きなクジラと数匹の魚と気泡だけが青に描かれている。


「これぐらいなら、一週間でできるよ。」
「一週・・・!?」
細かい作業が苦手なカカシは思わず絶句してしまう。
サクラはそんなカカシの様子をみてクスクスと笑った。

「これ見て。」
まだ含み笑いをしながら、サクラは部屋の奥のテーブルを指差す。
それはかなり大きなテーブルで、これまた大きな布がかかっている。
カカシが十分に注目したことを知ると、サクラは上にかかっていた白い布をとった。


「・・・げえ。」
「何よその声。」
そこには、まだ未完成のジグソーパズルが置いてあった。
テーブルにいっぱい置かれたパズルは森の絵であるらしく、ピースの大半は緑だ。
今にも鳥の鳴き声が聞こえそうな自然とは裏腹に、カカシは苦い表情でそれを見つめた。
自分なら、死んでもやらないだろうな。


「・・・あれ?」
ふとテーブルを見渡してカカシは首をかしげた。
「これ、見本はないの?」
「見本?」
「そうだよ。箱とかに完成した絵が描いてあるだろ、普通。あ、これ?」

カカシは言いながらテーブルの端に置いてある箱を持ち上げた。
中にはピースが詰まっているが、裏にも横にも絵は描かれていなかった。
その行動にやっとカカシのいう『見本』の意味を知ったサクラはぽんと手を叩いた。


「ああ!箱ね。箱なら捨てちゃったわよ。」
「・・・ええ!?捨てた!?」
サクラのなんでもない言葉にカカシは目を丸くする。

「うん。私、いつも最初に箱は捨てちゃうのよ。」
「じゃ、どうやって組み立てるの?」
「大体の絵は覚えてるし、いつも感覚でつくっちゃう。」
「・・・へえ。」

小さなものならまだしも、これだけのものを完成したものを見ないでつくるとは・・・。
自分には絶対にできないな。と、カカシは息をつく。


「しかし・・・少し意外だな。」
「何が?」
「サクラ、こういうの得意だったんだ。」
カカシの言葉に悪意は決してないが、サクラはむっと眉をひそめた。

「何よ。もっと頭が堅いと思ってたわけ?」
「あ、いやいや。そういう訳じゃないけどさ。」
「頭の堅い人間はパズルとか苦手なのよね。いいですよーだ。別に。」

完全にそっぽを向いてしまうサクラにはカカシは弱ったと頭をかく。
何もそんなつもりはなかったし、実際はこういうものが得意なのだからいいじゃないか。
第一、サクラのいうのが事実なら、カカシは相当の頭でっかちだ。


「悪かったって。サクラ。」
「つーん。」
「ありゃりゃ。」

口で『つーん』、というのはかわいらしいが、本人はいたって真面目らしい。
もはや取りつく島もないサクラに、カカシは苦し紛れに話題をかえる。


「で、でもさ。こんな大きいのつくってると、途中でピースがなくなったりしないのか?」
「・・・無くしたことなんてないわよ。風で飛ばないように布かけてるし。」
「じゃあ、なくしたらどうするの?」

やっと話してくれたサクラに安心しながらカカシは尋ねる。
カカシの疑問にサクラはしばらく無言で考えてから首をふった。

「なくさないから、大丈夫よ。」
「本当〜?」
「そうよ。今までだってなくらなかったし。」


サクラのその言葉に、カカシはにっこりと微笑んだ。
何よその笑いは、という表情をサクラはしたが、カカシは気にしない。

「じゃ、なくしたらおれも探してあげるから。」
「なくさないったらー。」
「もしも、ね。おれ探し物見つけるのうまいんだ。」
「・・・そうなの?」


半信半疑のサクラの頭をカカシはぽん、と手をのせる。
それから目を覗きこむようにしてもう一度笑いかけた。

「まかせなさーいよ。いつでも頼っていいから。」
「・・・なくしたら、ね。」
「うんうん。」

サクラの曖昧な言葉にも、カカシは満足げに頷く。
そんなカカシに、サクラは不思議そうに首をかしげた。

「お。もうこんな時間だ。」
「あ、本当だ。」
「じゃ、おれはそろそろお暇しますか。」

カカシはいうなり窓をあけて桟に足をかける。
わざわざ階段をおりて玄関にいくより、こちらのほうがはるかに早いのだ。


「先生、靴は?」
「もってるよー。」
どこにしまっていたのか、カカシは自分の靴を窓に腰掛けて履く。
抜け目ないわね、というサクラの呟きを聞きながらカカシは外へ飛び降りた。


「それじゃ、サクラ。また明日なー。」
「うん。またね、先生。」

窓から落ちそうになるほど身を乗り出してサクラが大きく手をふった。
カカシもそれに応えて手を振りながら、小さく微笑んだ。

「抜け目ない、か。」
くつくつと笑いながら、カカシは自分の右手を見つめる。
そこには緑色のピースが1つ。


「完成が楽しみだな。」
カカシは右手をぎゅっと握り締めると、パズルを完成させたときのサクラを思い浮かべた。
きっと1つあいた穴におろおろしながらも、約束通りカカシを呼ぶだろう。


「かわいいなー、サクラは。」
カカシは珍しく1人の時に笑いながら、オレンジに染まった道を歩いていった。






最初のほうはかなり煮詰まっていましたが、途中からはすらすらーっと書けました。おお。
サクラちゃんは何巻かの表紙で人形つくってましたし・・・部屋はもっと女の子らしいと思います(笑)

パズル大好きで、おまけに見本もみないで、大きなのを一週間前後でしあげてしまう・・・。
これは私の塾の友達がモデルです。
同じ名前で同じ誕生日の子なんですが、すっごくいい子。
めちゃかわいくて裏表がなくて、おもしろい。
折角美人なのに、常に変顔ばっかりしてる、明るい子です。

・・・いつの間にか友達の話になっていた。

カカシ先生、それは罪だよって話。盗みだよ。
果たして2人の間に恋愛感情はあるのか??謎。
少なくともカカシ先生はサクラちゃんが気になっているみたいですね。

どうでもいいけど、無駄に長かった・・・。




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