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石像の話
             カカシ先生のみつけた石像2
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「先生おきて〜!朝だよー!」

聞きなれない声。
頭の奥にピンクの髪をした少女の顔が浮かんだ。

これは・・・夢か?

しかし朝にとことん弱いおれは、聞かなかったふりをして再び本当の夢に入り込む。
まだまだ布団のぬくもりがおしいし、少女を現実とは思いたくなかった。

「先生ー、おきてー!」
どごっ!
「うぉっ!!」
すさまじい衝撃が鳩尾に伝わる。
慌てて身を起こすと、そこには無邪気に微笑む少女がいた。


・・・・・・忘れてた。

時は昨日に遡る。
石であったはずが突如少女に早変わり。
いくら上忍だろうがコピー忍者だろうが、これには驚いた。

あの時のおれの頭は猛スピードで回転していた。
石が人にかわるはずがない。
コレは何かの忍術だろう。


微笑む少女を見てまず思ったのは、『刺客か?』だった。
しかし、断じておれはロリコンではない。
刺客を送るならもっとグラマーな女だろう。

ではくの一か?
一見ただの少女のようだが、実は相当の使い手とか。
無能な部下達より年下で、おれより強いやつだっている。女で子供だろうと、関係はない。
が、やはりこれも違うだろう。

強い奴には独特のオーラがある。
『強さ』をあからさまにあらわにした者と、人を小ばかにしたようなオーラの者。
だいたいがこの2つにわかれる。

おれだって上忍なんだ。
たくさんの修羅場だって通ってる。
この女の子はくの一ではない。
それは勘などを通り越して確信に近い部分でわかる。


では、なんだ?

おれが長い間(もしくは一瞬だったのか)苦悶していると、少女は小首をかしげた。
パタパタと上下させていた足を止めて、ベッドから飛び降りる。

一瞬、緊張がはしる。
得体の知れないからこそ、恐ろしいのだ。
おれはとっさに身構えた。

けど、少女からでた言葉はあまりにも素直すぎて。
「おなか、すいた。」
「・・・は?」
全身の力がぬけた。

「おなかすいた〜・・・。」
弱々しい声でそういうと、ひくひくとすすり泣き始めた。
「うわわ、わかったから泣くな!!」

おれは女の涙になれている。
と、思っていたが・・・。
どうやら、女の子の涙には弱いらしい・・・それも、猛烈に。


仕方なく簡単な料理をはじめる。
女の子はおれの包丁さばきやフライパンの動きをあきることなくじっとみつめてきた。
『邪魔だ!!』
と一喝してやりたいところだが、まだ充血ぎみの瞳を見るとそれはできなかった。

「おいしそう・・・。」
女の子は目をキラキラと輝かせる。
おれは再び泣かせないようにと注意深く尋ねる。
「なあ、君さ。なんて名前なの?」
「え?私?」

利発そうな目をくりくりさせていたかと思うと、再びその翠の目に涙が浮かびはじめた。
「うわわわ!」
おれは動揺のあまり思わずフライパンをひっくり返しそうになった。
「ど、どうしたんだよ。泣くなって・・・。」
「泣いてないわよ!!」
あきらかに涙がでている。

女の子は必死に泣くまいとこらえていた。
おれはというと、おろおろしながらそれを見ているしか出来ない。
下手なことをいって泣かせるのはごめんだった。


しばらくすると、少女は深く深呼吸をする。
「思い出せないの。」
「は?」
「名前。」
どこか申し訳なさそうに上目遣いで女の子はいった。

おれはぼんやりと少女を凝視する。
あんまりにもぼんやりしすぎて、今度は料理を焦がしそうになった。
慌てて火をいったん止めてから、しゃがんで女の子の肩を揺らす。


「どど、どうして思い出せないんだ?記憶喪失?お母さんはわかるか?君はどこに住んでたんだい?」
必死に質問攻めをしていたせいか、おれの顔がこわかったせいか。
女の子の瞳から、またじわりと涙が溢れた。

「どうしてって言われても・・・。」
「うわわわわ!!」
火傷した時のような声を出すと、おれは少女から逃げるように離れる。
少し距離をおいて遠くからみるだけでも、女の子はただの女の子。
力など秘めているようにはみえない。
無力に泣いている女の子だった。

「わかった。わかったから、もう泣くな。な?」
「うん。」
女の子は割と素直に頷くと、服の袖で涙をぬぐった。


とりあえず安心したおれは、女の子と一緒にテーブルについて食事をすることにした。
女の子は行儀良く座ると、野菜炒めを見て目を輝かせた。
「おいしそう!」
女の子はさっそく箸を持ってにこにこと食事をはじめた。

おれは少し間を置いてから慎重に話し掛ける。
「あのさ。名前思い出せないなら、君のことなんて呼んだらいいかな?」
「私?」
女の子は口をもぐもぐさせながら自分を指差す。
おれが頷くと首を傾げてから笑顔でいった。


「サクラ。」
「え?」
「私のこと、サクラって呼んで。」
「サクラ?」
聞き返すと女の子はうんうんと頷いた。

「どうしてサクラなの?」
「私が寝てるとき、誰かがそう言ってたから。」
サクラ・・・桜、か?
それとも本当に少女の名前なのか。
誰かが彼女に『サクラ』と呼びかけたのか。ただ、少女の近くで『サクラ』という言葉を発したのか。

また質問攻めをしたいところではあるが・・・。
「?」
女の子、いや、サクラは首をかしげる。
再び泣かれては困る。もうさっきから、無駄に追求するのはやめようと誓ったのだ。
その夜、サクラはおれのベットで眠り、おれは横のソファの上で眠った。
様々な疑問を渦巻かせながら。


世界は、今日に至る。
「先生?」
サクラは昨日のことを回想していたおれを不思議そうに眺める。
「ああ、ごめんごめん。起こしてくれてありがとう。」
かなり乱暴だったけど。
その言葉はひとまず飲み込んで、おれは伸びをしながら起き上がる。

「おなかすいた?」
「うん。まあね。」
「それじゃ、朝ご飯にしようか。」
そういって台所に行こうとした俺をサクラはふふんと笑う。
それから自慢するようにふんぞり返った。

「朝ご飯なら、さっき私が作ったわよ!」
「・・・・・え?マジ?」
昨日まで腹すかしだったこの子が?
サクラは不安そうに眉を寄せる。

「・・・迷惑だった?」
「いやいや、そんなことない!でも、よく作れたな。」

また泣かせてはいけないと、おれは必死に首を振る。
しかし、今のサクラを見た限りでは、昨日のような弱そうな感じはしない。
気の強そうな目をしている。多分、元々こういう子なのだろう。
名前も住所も思い出せなくては、誰だって不安にもなる。
 
「なんだかね。昨日先生が作ってるのみたら、作れるようになったの。」
・・・これも、前から得意だったのか?
多分、記憶喪失の一種なのだろう。様々な行動から記憶が戻っているのだ。
きっとすぐ、すべてを思い出すだろう。

「味に自信はないけど・・・。」
サクラはそうはいうものの、いい香りはここまできている。
言ってみると、おいしそうな和風料理が並べられていた。
「おお!うまそうだな。」
「本当!?」


さっそくおれは椅子に座り、ご飯粒を一粒だけとると口に入れる。
味は、ただのご飯粒だった。
それでも念入りに噛み潰してからしばらく待つ。
「・・・・・・毒は入ってないな・・・。」
「え?」
小さい呟きはサクラには届かなかった。おれは微笑んでから食事に手をつけた。

サクラも向かいの席でご飯を食べる。
「ねえ、先生これからどこにいくの?」
おれは味噌汁を飲んでからサクラを見つめる。


「・・・あのさ、さっきからずーっと思ってたんだけど。」
「何?」
「なんでおれのこと『先生』って呼ぶの?」

こんな子供からそう呼ばれると、無能な部下達の顔が浮かぶ。
おれはサクラに『先生』とよんでくれ、などと一言もいってない。
第一、サクラはおれが『先生』であることすら知らないはずだ。

怪しんでいるおれに対して、サクラは「ああ」と生返事をした。
「だって、昨日きた男の人が『先生』って呼んでたもん。」
「はい?」
「ほら、あの黒い髪の、優しそうな男の人。」


・・・ちっ。見られてたのか。
おれは心の中で舌打ちをする。
昨日、サクラが寝静まってからイルカ先生と連絡をとったのだ。
『見知らぬ女の子が家にきている。すぐに届け出をだして親を見つけて欲しい』と。

夜中であるにも関わらず、イルカ先生は眠そうな顔でやってきた。
それから寝ているサクラをちらりと見ただけで首を振った。
大量にもってきた『行方不明者』の写真付きリストの中に、サクラはいなかった。

「めずらしい髪の色ですね、もしかしたら木の葉の者ではないかもしれませんよ。」
彼の言葉におれは絶望を感じた。
「他の里の者かもしれませんからね。すぐに解決はできないでしょう。」
不満そうなおれに、彼は苦笑いをしてフォローした。
「せいぜい一週間程度ですから。その間にあなたの子供嫌いをなおしてはどうです?カカシ先生。」
おれは仕方なく、ため息をついて頷いた。


あの時の様子をみてたのか・・・。
ちらりとサクラに目を移す。サクラはおしんこをつついていた。
どうやら会話まではきいていなかったようで、なぜかおれは安心する。
なぜかは、自分でもよくわからないが。

「あ、そろそろ時間なんじゃない?先生。」
「ん。ああ・・・まだ平気だろ。」
おれは魚の骨についた身をほじくって食べる。
「だって、集合は8時だっていってたじゃない。」
「大丈夫だよ。あと三時間は。」

サクラはにっこりと微笑んだ。
おれもなんとなく調子をあわせて微笑みかける。
サクラは立ち上がると思いっきりおれを蹴飛ばした。

「早く行ってきなさい!!」 




いったい何があったのか・・・。
というくらい長くなってしまいました。
2つにわけたほうがよかったかしら・・・。
続きます。


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