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弁当と恋と戦い
            
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PM12:20
 
そろそろだな・・・。
 
サスケはそう思うと、激しく動かしていた体を休める。
任務が休みの日、サスケはここの演習場で自己鍛錬をする。
日課になっているスケジュールに、ゆったりと壁にもたれて座る。
それからちらりと腕時計を見た。
そして、小さく頷く。
 
そろそろだ。
 
 
「サスケくーん!!」
声が聞こえるより先に、サスケは慣れ親しんだその気配に目を移していた。
目線の先にいるのは、桃色の髪をもつ同僚の少女。
嬉しそうにこちらに手を振りながら走ってくる。
もう一方の手には、弁当の包み。
 
「サスケくん、お弁当つくってきたわよ!」
サスケの視線に気がついたのか、サクラは走りながら包みを掲げる。
その様子を横目でみながら、サスケは座ったまま動かないで、ドリンクを一口のむ。
 
 
「はい、食べてみて。」
サクラは息を荒くしながらおれの前に立つと、微笑みながら包みを差し出す。
「自信作なのよ。」
もう一度にっこりと微笑むサクラを尻目に、サスケは腕時計を再びのぞく。
 
 
PM12:23
 
 
・・・来る頃だな。
 
そう考えた刹那、おれのもたれている壁の横にクナイが突き刺さられた。
おれは動じることなくそれを見る。
「きゃあああああ!!サスケくん、大丈夫!?」
サクラは悲鳴をあげてから、キッとクナイの飛んできたほうに振り返る。
 
 
「・・・また来たわね・・・!!」
ふるふると体を震わせながら呟くと、サクラはそちらに怒声をあびせた。
「カカシ先生ーーー!!」
 
すると木の合間から、予想通りの男が顔をのぞかせた。
そして何事もなかったかのように片手をあげて2人に声をかける。
「よっ!偶然じゃないか。サスケ、サクラ。」
「何が偶然よ、変態教師!!」
 
 
サクラは怒鳴りながら、壁からさきほどとんできたクナイを抜く。
クナイにはご丁寧にも、『カカシ』と書かれていた。
「何回邪魔すれば気がすむのよ!ばか!」
「だーって。」
カカシはポケットに手を突っ込んだまま、子供のように口を尖らせる。
「結婚しようっていってもサクラが承諾しないから。それに・・・。」
 
 
カカシは殺気を含ませた目を黙っているサスケに向ける。
「こんな奴に弁当あげようなんてしてるからさ。」
「あげちゃいけないっていうの!?」
「別にいいけど、こいつが受け取るわけないでしょ。」
 
サスケは小さくため息をついた。
受け取ろうとしたところで邪魔するくせに、何をとぼけているのだか。
 
サクラはキーッと声をあげる。
「何よ!一生懸命つくったんだから、わからないでしょ!」
「無理無理。」
熱くなるサクラと対称に、カカシは冷静に首をふった。
 
 
「何回やっても無駄だよ。サクラだってわかってるでしょ?」
「うぅ・・・!」
思わずサクラは言葉につまる。
確かに今まで何度も何度も挑戦したが、一度も受け取ってもらえたことはない。
・・・というのも、受け取る寸前にカカシが邪魔するのだが。
 
 
「ね?だったらさ・・・。」
カカシはそう言うと少ししゃがんでサクラと目線をきっちり合わせる。
サクラはびくっとすると、弁当をぎゅっと抱えながら後ずさりする。
そんなサクラを見つめながら、カカシがにっこりと笑った。
 
 
「その弁当は・・・。」
「・・・い、いやーー!!」
サクラは耐え切れなくなったようにダッと走り出す。
 
「おれが食ってやるよ!!」
言い終わる前にカカシもダッとサクラを追いかける。
 
サスケは2人の姿が完全に見えなくなるまで目で追うと、腕時計に目を移す。
 
 
PM12:30
 
「終わるのは・・・約一時間後ってところか・・・。」
サスケは小さな声で呟くと、端においてあった自分の鞄をさぐる。
そして中から持参したパンを出してかじった。
辺りには、静かで暖かな空間が広がっている。
 
 
 
「うぎゃあああああああああ!!」
「あはははは。サクラー、待ちなよー。」
所かわって大分演習場を離れた野原には、サクラの悲鳴が響き渡っていた。
必死の形相で逃げるサクラとは違い、カカシは実に楽しそうにサクラを追いかける。
 
 
「ふふ、おーいつーいた♪」
「いぎゃあああああああああああ!!!」
余裕の表情でサクラの横にカカシが並ぶ。
サクラはというと、お世辞にも女の子らしいとはいえない声でさらに悲鳴をあげる。
 
「し、しつこーい!!」
「そんなことないよ〜。」
尚も走りつづけるサクラに、カカシも足並みをそろえて笑う。
「サクラこそ、それさえおれにくれれば万事解決なのに。」
「絶っっ対、嫌!」
サクラはさらに弁当に力をこめると、カカシに向かってびーっと舌を出す。
 
 
ところが、目の前に広がっていた野原は突如なくなる。
かわりに、高々と立ちはだかる岩の前に行き着いてしまった。
 
 
サクラはカカシから逃げようとして、どんっと岩に背中をぶつけた。
「もーう逃がさないよ。」
カカシは目は笑っているが、ただならぬ雰囲気をただよわせながらサクラに詰め寄る。
 
 
じりじりと縮まってゆく距離。
恐怖のあまり今にも泣き出しそうな顔をしていたサクラは、観念したようにそっと力をぬいた。
それから小さくため息をつく。
 
「・・・私の負けね。」
「わかってくれた?」
カカシはぱっとおどろおどろしていた雰囲気をかえる。
サクラは頷きながら弁当の包みを広げた。
 
 
「まったく、先生には敵わないわ。」
「・・・・・・。」
サクラはぱかっとふたを開けると、卵焼きを一つ箸でつまむ。
 
 
「食べさせてあげるから。はい、あーん。」
「・・・・・・サクラ。」
あまい声でサクラが囁くが、カカシは先程とは違い胡散臭そうな目でサクラを見つめる。
 
 
「・・・この前もそういって、小型爆弾入りのウインナーを食べさせてくれたよね・・・。」
「あらっ?そうだったかしら。」
サクラは白々しく驚いたように口に手をあてる。
だが、すぐにふふふ、と微笑んだ。
 
 
「大丈夫よ。」
サクラは優しく笑うと卵焼きを口に運ぶ。
疑うカカシをよそにもぐもぐとよく噛んでから、ごくんと食べてしまう。
「今回は、正真正銘ただの手作りお弁当。」
「本当!?」
 
 
やっと信用したカカシは、さっそくサクラの隣りに大人しくすわる。
サクラはくすくすと笑うと、もう一度たまご焼きを箸でとる。
「照れるなあ・・・。」
「はい、あーん。」
へらっと幸せそうに笑ってから、カカシは素直に口を大きくあける。
「あーん。」
 
サクラは妖しく笑うと、卵焼きをつまんだままの箸を勢いよくカカシの口のなかに突き刺す。
 
 
ドスッ!!!
 
 
 
「っぎゃああああああああああああ!!!」
「おーっほっほっほ!!」
あまりの痛みに飛び上がるカカシを見ると、サクラは甲高く笑い声をあげた。
それから弁当の蓋を閉めて素早く元のように包む。
 
 
そして小さくガッツポーズをする。
「くの一の授業で、男を油断させる方法をしっかり学んでおいてよかったわ。」
してやったり!ともう一度笑い声をあげてから、さっき来た道を走って戻る。
ところが、いったん止まっていまだに騒いでいるカカシをちらりと振り返る。
 
 
「ごめんなさいね・・・カカシ先生。でも・・・こうするしかなかったの・・・。」
サクラはくっと涙をのむ・・・演技をしてから、またにやりと笑う。
「サスケくんのために作ってきたんだから、誰がカカシ先生にあげるものですか!」
 
 
「むぐぅ・・・おのれサクラ・・・!」
走り去っていくサクラを見ながら、カカシはゆっくりと顔をあげる。
ズボッ!という音を立てながら箸を口からぬくと、ギロリと前を睨みつけた。
「残りの弁当も・・・おれがもらう!!」
カカシにとっては騙されたことよりも、サクラの弁当を食べることが大切らしい。
ちゃっかりと箸にささったたまご焼きを食べてから、音も立てずにそこから姿を消した。
 
 
 
PM13:20
 
「・・・行くとするか。」
サスケはズボンを軽くはらってから荷物を持って立ち上がる。
もうじきサクラとカカシがここへ戻ってくるだろう。
「触らぬ神にたたりなし・・・か。」
サスケはそうぼやいてから演習場を後にした。
 
 
「はあ・・・はあ・・・。」
サクラは息を荒くしながらも口の端をあげて走っていた。
もうすぐ野原が終わり、演習場が見えてくる頃だ。
「今日こそはサスケくんに・・・うふふ!」
サスケに褒められ、そこから見直され、最終的には結婚する・・・。
ところまで妄想したところで、サクラは気配を感じた。
 
よく知る気配にはっとして前をみると、前方に誰かがいる。
それは先程サクラがしとめたと思っていた人物であった。
 
 
「・・・・・・。」
サクラはサッと草陰に隠れる。
改めて目を凝らしてみるが、やはりそこにいるのはカカシだった。
サクラは小さく舌打ちをする。
それから、じっくりと野原を見渡した。
 
 
(先生のいるところから完全に死角になるあそこの道を、気配を消してうまく通る・・・。)
そう考えてからさらに観察をする。
(今は大分気が張ってるから、しばらく待ちましょう。)
まとまった答えに満足してから、ふと何の気なしに腕時計をみる。
そして飛び上がりそうになった。
 
 
PM13:25
 
 
うっそー!!
もうこんな時間なの!?
 
声に出しそうになるのを慌てて堪えると、サクラは目を閉じる。
(作戦変更!いますぐ特攻よ!しゃーんなろ!!)
いざとなったらさっきのようにどうにか逃げればよい。
サクラは決心を固めると、勢いよく草陰から飛び出した。
 
 
「あ・・・れ?」
サクラは前方を見て唖然とする。
当然いると思っていたカカシがいない。
思わず拍子抜けしながらも、サクラはうーんと唸る。
 
 
「こんな時間だし・・・あきらめて帰ったのかしら?」
「誰が?」
「カカシ先生。」
答えてからサクラははっとする。
冷や汗をかきながらおそるおそる振り返ると、驚くほど近いところに顔が合った。
 
 
「よっ!偶然じゃないか。サクラ。」
午後にあったときと同じようにカカシは片手をあげて微笑んだ。
サクラはしばらく焦点の合わない目でカカシを見てから、じわりじわりと恐怖を感じた。
 
 
「き、きやあああああああああああ!!!」
奇声を発しながらサクラは逃げようとするが、すぐにカカシが前にまわってくる。
「にげられなーいよ。」
にこり、と微笑みかけられ、サクラは背筋がゾワリ、とした。
「さっさと渡してもらおうか。」
 
 
怖いものは怖い。
だが、ここまでくれはもはや意地だ。
「だーれが渡すもんですか!!」
サクラは精一杯の声をはりあげる。
しかし、その声も震えていた。
 
 
「強がるなって。」
カカシがそういい終わると同時に、サクラが抱えていた弁当がなくなる。
「え!?」
慌てて抱えていた手を見つめてから、カカシの方をみる。
一瞬で奪われた弁当は、カカシの右手に収まっていた。
 
 
「そんじゃあ、いただきましたvv」
「あーーーーーーーーーーーーーー!!」
叫んだときには時遅し。
カカシの姿はドロンと煙にまかれて消えてしまった。
 
 
 
PM13:40
 
 
サスケは家の掛け時計をみながら、窓の外に耳をかたむける。
「あーーーーーーーーーーーーーー!!」
ごく小さくだが、そんなサクラの叫び声が聞こえた。
サスケは小さく笑う。
「勝負がついたみたいだな。」
 
 
 
現在・23勝0敗。
 
カカシ、連続勝利で記録更新中。



久々にかいたと思ったら、何をかいているんだか。
かきたかったのは、文章の間に時間がでてきる所。
あとは、サクラちゃんがカカシ先生を負かす所(結果的には負けてますが)

サクラちゃん、どうやら負けても満更ではない様子。
サスケくんにいたっては2人の仲を応援している(楽しんでる?)ようです。

本当はもっと長かったんですが(え)、断念しました。
カカシ先生が負けるのは、サクラちゃんには隙だらけだからですよ。
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