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青い蝶
 
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懐かしいアカデミーの教室は、こざっぱりと整頓されている。
優しい風が開けられた窓から吹いてきて、カーテンを揺らした。
かすかに入る日差しも温かくて、授業中に何人もの生徒が眠っていたのを思い出す。


そんなうららかな春のひと時っていうのも、今の私には関係ない。
今誰が座っているのかはわからない机に座る私の前には、1人の男の子A。

「春野さん、これ・・・受け取ってください。」
もじもじする男の子から渡されたのは、紫のリボンがまいてある小さな箱だった。
重さからして、髪留めだろうな、と予想する。
それから再び顔を紅くして俯いている男の子に目を戻す。

「好きです、春野さん・・・。」

あーあ。まただわ。
いい加減にしてほしい。


これで、何十回目だろう。男の子から告白されるのって。
おなじように呼び出されて、同じような言葉をもらうの。

「付き合ってください・・・。」

頬を赤らめてそういわれても、私にはそんな気持ちなんてない。
すぐにお断りしてもいいんだけど・・・。

「私のどこが好きなの?」
面倒だけど、一応理由くらいきくのが筋でしょ。
男の子はさらに顔を火照らせて、もじもじと言葉をつなぐ。

「春野さんは明るくて、かわいくて、素直で・・・素敵だから・・・。」
それをきいた瞬間、私は怒りを覚えた。


ムカツク。
明るくて、かわいくて、素直で素敵だから、ですって。
あんた、それってちゃんと私のこと見てないって証拠よ。

「ごめんなさい。私のことそういう風にみる人とは、付き合えないわ。」
怒りに任せて冷たく言いはなう。
男の子は何かいったみたいだけど、私は後ろもみないで教室をでた。

バカじゃないの、あいつ。
私はまだ怒っている。
廊下を歩く足も大またぎみだ。

『明るくて、かわいくて、素直で素敵だから』
何度も頭の中で繰り返される言葉に、私は何度も繰り返し舌打ちをした。

バカみたい。
それじゃあアカデミーに入りたての私は。
前髪を長く伸ばして幽霊みたいで、泣き虫でデコリーンなんて呼ばれてた私は。
どうなるのよ?
あんたの言った『理由』に、何一つ当てはまらないわ。

結局は表面にだけ囚われちゃって。
いい加減にあきあきしちゃう。
誰も本当の私なんて知らないくせに。

「・・・ふん!」
ドカッ!
いまだに煮え繰り返る腸をどうにもできず、私は近くにあったゴミ箱をけとばす。

こうすると、少しすっきりする。
ちょっと我に返ると、右手にずっともっていた箱に気づいた。
まず、紫のリボンっていうのが嫌。私はピンクがすきなのよ。
趣味もわからないで付き合って、どうするつもりなのかしら。

まじまじとみてからゴミ箱に捨てようとして、手を止める。
ためしにリボンと包装紙をくるんでみた。
中から出てきたのは・・・

「やっぱり、髪留めじゃない。」

青い蝶の髪留め。
私の髪が長いからかしら。
けどね。さっきもいったけど、私はピンクが好きなのよ。

今度こそゴミ箱に捨てようとする。だけどまた中断する。
かけられた声によって。

「サークラ!」
「・・・いの。」

明るくやってきたのは、黄色くて長い髪をたばねているいのだった。
「なによー、あんた、また告白されたわけー?」
「うるさいわねー。」

軽く足らいながらも、内心嬉しい。
昔からそう。いのといると、どんなイライラもたちどころにふっとんでしまう。

「もったいなじゃない。ためしに付き合ってみればー?」
おらおら、といのは私を軽く肘でつつく。
と、そこでいのは私の手にもっていた髪留めに目を留めた。

「何それ、かわいいじゃないー。」
「ああ、これ?あげるわよ。」
軽く差し出してみせると、いのは目を丸くする。

「えー、いいの!?」
「いいわよ、私には青は似合わないもん。はい。」
「そんなことないわよー。けどありがとうー!」

いのはそういいながら嬉しそうに髪留めを受け取る。
しかしさっそく付けようとしても鏡がないためか、うまくつけられないようだ。

「やってあげるわよ。」
「サンキュー、サクラ。」

いのは少し中腰になったので、私は後ろに回る。
やわらかい髪にふれると、シャンプーの香りがほんわかとした。

「はい。」
「ありがとー。どう?似合う?」

青い服をきているいのに、その蝶は驚くほどよくあっている。
私は思わず笑顔になった。

「うん、いの、すごく似合ってるわよ。」
「本当にー?」
「すっごいかわいい。」

いのはマジー?とくすくす笑う。
・・・ほんとうに。いのといると心が落ち着く。


おかしな私。
いのは普通の友達じゃない。もっと特別な存在。

今の私だって、いのがいなきゃ在りえない。
さっきの男の子みたいに、バカな『理由』からじゃない。
いのが私に手を差し伸べしてくれた時点で、多分私はいののことをこう思う運命にあった。

私がいのを好きなのは、いの自身が示唆したこと。
責任とんなさいよね。

「ちょっとサクラー、あんた何考えてるのよー。」
「別になんでもないわよ。それより、いの・・・。」
「?」

出かかった言葉は、いつものようにすぐに引っ込む。
「・・・なんでもないわ。」
「なによ、気になるじゃないー!」

いのはそういって私をつつく。
私は笑いながらそれを受けた。


今はまだ、この関係を壊したくないから、真実はいわないけど・・・。
いつか、必ず伝えてやるから。
驚くんじゃないわよ。

私がそう思ってるなんて、いのは夢にも思ってない。
いのの髪にとまったようにある蝶は、美しく、妖しく輝いていた。



異色のいの←サク!!初挑戦です!!
サク←いののほうがやっぱりやりやすいけど、楽しかったぁ(笑)
っていうかサクラちゃん悪女!?
男の子からもらったやつあげちゃってるし!!
めっちゃ気が強い・・・。
でも、なんかこの方がなんか原作のサクラちゃんに近いかも?(爆)

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