☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 青い蝶 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
懐かしいアカデミーの教室は、こざっぱりと整頓されている。 優しい風が開けられた窓から吹いてきて、カーテンを揺らした。 かすかに入る日差しも温かくて、授業中に何人もの生徒が眠っていたのを思い出す。 そんなうららかな春のひと時っていうのも、今の私には関係ない。 今誰が座っているのかはわからない机に座る私の前には、1人の男の子A。 「春野さん、これ・・・受け取ってください。」 もじもじする男の子から渡されたのは、紫のリボンがまいてある小さな箱だった。 重さからして、髪留めだろうな、と予想する。 それから再び顔を紅くして俯いている男の子に目を戻す。 「好きです、春野さん・・・。」 あーあ。まただわ。 いい加減にしてほしい。 これで、何十回目だろう。男の子から告白されるのって。 おなじように呼び出されて、同じような言葉をもらうの。 「付き合ってください・・・。」 頬を赤らめてそういわれても、私にはそんな気持ちなんてない。 すぐにお断りしてもいいんだけど・・・。 「私のどこが好きなの?」 面倒だけど、一応理由くらいきくのが筋でしょ。 男の子はさらに顔を火照らせて、もじもじと言葉をつなぐ。 「春野さんは明るくて、かわいくて、素直で・・・素敵だから・・・。」 それをきいた瞬間、私は怒りを覚えた。 ムカツク。 明るくて、かわいくて、素直で素敵だから、ですって。 あんた、それってちゃんと私のこと見てないって証拠よ。 「ごめんなさい。私のことそういう風にみる人とは、付き合えないわ。」 怒りに任せて冷たく言いはなう。 男の子は何かいったみたいだけど、私は後ろもみないで教室をでた。 バカじゃないの、あいつ。 私はまだ怒っている。 廊下を歩く足も大またぎみだ。 『明るくて、かわいくて、素直で素敵だから』 何度も頭の中で繰り返される言葉に、私は何度も繰り返し舌打ちをした。 バカみたい。 それじゃあアカデミーに入りたての私は。 前髪を長く伸ばして幽霊みたいで、泣き虫でデコリーンなんて呼ばれてた私は。 どうなるのよ? あんたの言った『理由』に、何一つ当てはまらないわ。 結局は表面にだけ囚われちゃって。 いい加減にあきあきしちゃう。 誰も本当の私なんて知らないくせに。 「・・・ふん!」 ドカッ! いまだに煮え繰り返る腸をどうにもできず、私は近くにあったゴミ箱をけとばす。 こうすると、少しすっきりする。 ちょっと我に返ると、右手にずっともっていた箱に気づいた。 まず、紫のリボンっていうのが嫌。私はピンクがすきなのよ。 趣味もわからないで付き合って、どうするつもりなのかしら。 まじまじとみてからゴミ箱に捨てようとして、手を止める。 ためしにリボンと包装紙をくるんでみた。 中から出てきたのは・・・ 「やっぱり、髪留めじゃない。」 青い蝶の髪留め。 私の髪が長いからかしら。 けどね。さっきもいったけど、私はピンクが好きなのよ。 今度こそゴミ箱に捨てようとする。だけどまた中断する。 かけられた声によって。 「サークラ!」 「・・・いの。」 明るくやってきたのは、黄色くて長い髪をたばねているいのだった。 「なによー、あんた、また告白されたわけー?」 「うるさいわねー。」 軽く足らいながらも、内心嬉しい。 昔からそう。いのといると、どんなイライラもたちどころにふっとんでしまう。 「もったいなじゃない。ためしに付き合ってみればー?」 おらおら、といのは私を軽く肘でつつく。 と、そこでいのは私の手にもっていた髪留めに目を留めた。 「何それ、かわいいじゃないー。」 「ああ、これ?あげるわよ。」 軽く差し出してみせると、いのは目を丸くする。 「えー、いいの!?」 「いいわよ、私には青は似合わないもん。はい。」 「そんなことないわよー。けどありがとうー!」 いのはそういいながら嬉しそうに髪留めを受け取る。 しかしさっそく付けようとしても鏡がないためか、うまくつけられないようだ。 「やってあげるわよ。」 「サンキュー、サクラ。」 いのは少し中腰になったので、私は後ろに回る。 やわらかい髪にふれると、シャンプーの香りがほんわかとした。 「はい。」 「ありがとー。どう?似合う?」 青い服をきているいのに、その蝶は驚くほどよくあっている。 私は思わず笑顔になった。 「うん、いの、すごく似合ってるわよ。」 「本当にー?」 「すっごいかわいい。」 いのはマジー?とくすくす笑う。 ・・・ほんとうに。いのといると心が落ち着く。 おかしな私。 いのは普通の友達じゃない。もっと特別な存在。 今の私だって、いのがいなきゃ在りえない。 さっきの男の子みたいに、バカな『理由』からじゃない。 いのが私に手を差し伸べしてくれた時点で、多分私はいののことをこう思う運命にあった。 私がいのを好きなのは、いの自身が示唆したこと。 責任とんなさいよね。 「ちょっとサクラー、あんた何考えてるのよー。」 「別になんでもないわよ。それより、いの・・・。」 「?」 出かかった言葉は、いつものようにすぐに引っ込む。 「・・・なんでもないわ。」 「なによ、気になるじゃないー!」 いのはそういって私をつつく。 私は笑いながらそれを受けた。 今はまだ、この関係を壊したくないから、真実はいわないけど・・・。 いつか、必ず伝えてやるから。 驚くんじゃないわよ。 私がそう思ってるなんて、いのは夢にも思ってない。 いのの髪にとまったようにある蝶は、美しく、妖しく輝いていた。
異色のいの←サク!!初挑戦です!! サク←いののほうがやっぱりやりやすいけど、楽しかったぁ(笑) っていうかサクラちゃん悪女!? 男の子からもらったやつあげちゃってるし!! めっちゃ気が強い・・・。 でも、なんかこの方がなんか原作のサクラちゃんに近いかも?(爆)