☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ カカシ先生とバレンタインデー ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
2月14日。 男としては、意識するなというほうが無理な日である。 例え毎年まったく貰えない人間でも。 腐るほど貰える人間でも。 決まった人から必ず貰える人間でも。 義理チョコしか貰えない人間でも。 ほぼ全員の男が、この日を意識しているだろう。 そして、ここを歩くこの男も例外ではない。 男の名前ははたけカカシ。 自分でもよくわからないが、上忍であることもあるのだろう。 分類でいえば、あきらかに『腐るほど貰える人間』である。 普段からあまり物に執着しないカカシ。 だが今年のこの日のことは、一週間も前から気になっていた。 それというのも、毎年そうだったわけではない。 去年などは大量に押し付けられたチョコを見て、ああそういえばと思ったほどだ。 こんなにも気にする理由。 それはただ一つ。 「んな!?」 「なんで!?」 驚愕した2人の顔が目に入る。 カカシは微笑みながら片手をあげた。 「よう。おはよう。」 「そ、そんな馬鹿な・・・!」 「今日は雪が積もるってばよ!」 「・・・失礼だよ。君たち。」 少年達が驚くのは無理ない。 いつもなら1時間以上の遅刻はあたりまえのことの上忍が、15分前にきたのだから。 まだ喚いている2人を無視して、カカシは周りを見渡した。 「・・・サクラは?」 「まだ来てないってばよ。」 答えたのはナルトだ。 底抜けに明るいナルトも、どこか落ち着かない様子である。 もちろんこれは、今日を意識しているため。 対するクール少年サスケも、カカシと同じだ。 『腐るほど貰える』が、欲しい人間から貰えないのは困る。 どうやら、お目当ての少女から貰えるかどうかが心配らしい。 そう。カカシがこの日を意識していた理由。 それは、前から気になっていたサクラから貰えるかどうかを意識していたからなのだ。 「そうか。」 サクラはまだなのか・・・。 と呟くと、カカシは黙って空を見上げる。 男3人、みんな今日のことを考えて沈黙している。 どこか気まずい空気があたりに流れる事となった。 10分後。 道の向こうに桃色の髪が揺れるのが見えた。 最初に気がついたのはカカシ。 それからすぐにナルトとサスケも少女の姿を確認する。 「おはよー!」 手を振りながらやってきた少女・サクラは、カカシの顔を見て動きを止めた。 「えええ!?なんでカカシ先生がきてるの!?」 「はは。ま、今日くらいは・・・な。」 どこか意味深なカカシの言葉に、サクラは「よくわからない」と首をかしげた。 今3人の男の視線は一つに集まっている。 それは、サクラが左手に持っている紙袋。 何が入っているかは考えるまでもないだろう。今日は2月14日なのだから。 ほとんど無意識に紙袋を見ている3人だが、サクラは視線に気づかない。 それどころか、なぜカカシが早く来たのかを一生懸命考えているようだ。 (・・・先手必勝。勝負をかけるか。) カカシは真剣に紙袋をみてから、1人小さく頷いた。 すると表情をいつもに戻して、はははと笑う。 「なんだよサクラ。おれが早くきたら変なのか?」 「うん。変。」 冗談だったのだが、サクラは真面目に大きく頷く。 「ま。今日は大切な日だからなー・・・。」 カカシは意味ありげにいうと、サクラの顔をじっと見つめる。 だがサクラは再び首をかしげるだけだ。 (・・・いざ、勝負!!) カカシはそう考えると、ため息を小さくついた。 「どうでもいいけど、先生な・・・。」 カカシは横を向きながら小さな声で・・・だが聞き取れるくらいの声で・・・呟く。 「黒くてあまい物が好きなんだよなー・・・。」 ナルトはカカシの大胆な行動に聞こえないようブーイングを出す。 どうせはぐらかされるぜ。とサスケは鼻で小さく笑った。 しかしサクラはカカシの言葉を聞くと、ぱっと表情を明るくした。 「本当!?先生、好きなの!?よかったー。」 予想外のサクラの言葉に2人は目を見開く。 けどサクラはそんなことには気づかず、紙袋をあさった。 「先生って甘い物苦手そうだから、心配だったの。」 上機嫌で中から一つのタッパーを取り出す。 そして満面の笑みでカカシにそれを渡した。 「サクラ・・・ありがとう!」 カカシは歓喜に打ち震えながらそのタッパーを受けとる。 そして中を見て愕然とした。 「サクラ・・・これは・・・・!!」 「何?」 サクラは笑顔で聞く。 カカシは小さく震えながらそのタッパーを突き出した。 「これ・・・『おはぎ』じゃないかーーーーー!!」 「?そうだけど。」 サクラはなんで?という顔で微笑む。 「黒くて甘い物・・・って、おはぎでしょう?」 「な・・・!」 「田舎のおばあちゃんがいっぱい送ってきてくれたのよ。食べきれないから、おすそ分け!」 白く固まっているカカシの横で、サクラはにこにこと説明する。 それから紙袋の中から2つのタッパーを取り出し、サスケとナルトに微笑んだ。 「はい。2人にも。」 「ああ・・・。」 「ありがとう・・・。」 「いっぱい食べてね!」 元気なサクラの声だけが、虚しい雰囲気の7班の中に響き渡った。
大イベントっていうのは、いうまでもなくバレンタインのことです。 っていうかチョコはタッパーに入れないでしょう。気づけよ!カカシ先生!! そしてサスケは甘い物は苦手なはず・・・。おはぎだって大嫌いでしょう。 だけどサクラちゃんの笑顔に、断れません。というか、断るんなら私がいただく。 サクラちゃんは恋する乙女なので、バレンタインを忘れてることはないと思いますが・・・。 おはぎを渡すことで頭がいっぱいだったのでしょう。 早く思い出してあげて!!サクラちゃん!!